Oriental Medicine,  五臓六腑

肺・大腸に関する不調・症状|東洋医学の実践

肺・大腸に関する症状

これまで東洋医学の基本的な概念の説明と、どのように不調を診断していくかを説明してきました。体調やライフスタイルの情報を集めたら、次は体調を分類し分析していきます。東洋医学での不調の分類の仕方は、まず、[陰陽]、[気血津液]、[臓腑]のどの観点から分析するかで3つに分かれます。今回はその臓腑の中の[肺][大腸]に関わる不調の種類を説明していきます。これまでの詳しい説明は下記をご覧ください。

肺・大腸の意味 東洋医学の実践法

※図や表以外で、東洋医学の言葉は全て[ ]の中に表しています。例えば、[心]は東洋医学での[心](しん)を表し、普通に心と書いてある場合は、通常の「こころ」を表しているとお考え下さい。そして[ ]内の言葉はまとめて東洋医学の言葉一覧のページで意味を調べられます。

目次

  1. [肺][大腸]タイプの特徴
  2. [肺気虚]
  3. [肺陰虚]
  4. [風寒犯肺]
  5. [風熱犯肺]
  6. [痰湿阻肺]
  7. [燥熱傷肺]
  8. [大腸湿熱]
  9. [大腸津虚]



[肺][大腸]タイプの特徴

[肺][大腸]は、コンディションを外から守るバリア機能に関連しています。そのため、[肺][大腸]に不調が出やすい人は、バリア機能が弱く、かぜをひきやすかったり、鼻炎や花粉症などのアレルギー体質を持っている人が多いです。鼻や喉の呼吸器系の他にも、皮膚に症状が現れやすいです。このタイプの人は乾燥肌やアトピー、肌荒れなどになりやすい場合もあります。さらに詳しく分類された特徴は下記になります。本来診断は色々なヒアリングなどから総合的に行いますが、自分が[五臓]のどのタイプに当てはまるかの簡単なチェックは下記をご覧ください。

臓腑弁証

[肺気虚](はいききょ)

[肺]の機能が低下している状態です。特に[気]の[防御作用]が低下していて[気虚]の症状が出るのも特徴です。かぜが長引いていたり、過労や先天不足が原因です。[肺気]を補って[肺]の機能を保つ[補益肺気](ほえきはいき)という治法を行います。

症状

咳が出る、息切れ、透明で薄い痰がでる、声が小さい、声のトーンが低い、かぜをひきやすい、疲れやすい、疲れると悪化する、顔色が白い、[自汗]など

舌の状態

[舌質]は淡白か[歯痕]

処方例

漢方

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

精油

サイプレスクラリセージティーツリーヒソップユーカリ

[肺陰虚](はいいんきょ)

[肺陰]が不足していて、[肺]に潤いが無くなっている状態です。慢性疾患、過労、熱病の後などが原因です。[肺]の[陰液]を補う[滋陰潤肺](じいんじゅんぱい)という治法を行います。

症状

夕方から空咳が出る、しゃがれ声、[五心煩熱]、[潮熱]、寝汗、痰が少量で粘る、息切れ、[口乾]、声がかすれるなど

舌の状態

[舌質]は暗紅・[裂紋]、[舌苔]は[薄苔]か[無苔]

処方例

漢方

麦門冬湯(ばくもんどうとう)

精油

サイプレスクラリセージフランキンセンスサンダルウッドゼラニウム

[風寒犯肺](ふうかんはんぱい)

[風邪]と[寒邪]が侵入して、[肺]の機能が低下している状態です。[表証]になります。[肺]の[風寒]を[宣発]して[寒邪]を取り除く[散寒宣肺](さんかんせんぱい)という治法を行います。

症状

咳、[喘鳴]、寒気、痰が透明か白い、水溶性の鼻水、鼻づまり、悪寒、軽度の発熱、頭痛、節々の痛みなど

舌の状態

[舌苔]が[薄苔]か[白苔]

処方例

漢方

杏蘇散(きょうそさん)

精油

ヒソップユーカリタイムパインティーツリー

[風熱犯肺](ふうねつかんぱい)

[風邪]と[熱邪]が侵入して、[肺]の機能が低下している状態です。[表証]になります。[熱]があるので、炎症が起きている状態です。[肺]の[風熱]を[宣発]して[熱邪]を取り除く[清熱宣肺](せいねつせんぱい)という治法を行います。

症状

咳、痰が黄色く粘る、鼻づまり、鼻水が黄色く粘る、発熱、軽度の悪寒と[悪風]、頭痛、咽の腫れと痛み、[口渇]など

舌の状態

[舌質]が[尖紅]、[舌苔]が[薄苔]か[黄苔]

処方例

漢方

清肺湯(せいはいとう)

精油

サイプレスクラリセージティーツリーラベンダーフランキンセンスペパーミント



[痰湿阻肺](たんしつそはい)

[痰]と[湿]が[肺]に停滞している状態です。[肺]の[水滞]になります。[脾気虚]がある人はなりやすい症状です。[外感寒湿邪]や、[肺]の[宣発粛降]機能が低下し[湿]が停滞している状態、もしくは[脾]の[運化]が悪くて[湿]が停滞している状態です。[湿邪]を乾燥させて[痰]を取り除く[燥湿化痰](そうしつかたん)という治法を行います。

症状

咳、白い痰が沢山出る、痰が切れやすい、[喘鳴]、胸が詰まって苦しいなど

舌の状態

[舌質]が淡白、[舌苔]が[白苔]か[膩苔]

処方例

漢方

二陳湯(にちんとう)

精油

グレープフルーツサイプレスパインパチュリライムフェンネル

[燥熱傷肺](そうねつしょうはい)

[燥邪]と[熱邪]が侵入し、[津液]が無くなり、[肺]が乾燥して[熱]が生じている状態です。外感燥熱邪が原因の場合は[表証]になりますが、[肺陰虚]の慢性化が原因の[裏証]の場合もあります。[肺]の[熱]を取り除いて潤し、[燥邪]を除く[清肺潤燥](せいはいじゅんそう)という治法を行います。

症状

空咳、痰が少量で切れにくい、[口渇]、咽の痛み、胸痛、鼻や喉の乾燥、発熱、頭痛など

舌の状態

[舌質]は紅色か乾燥、[舌苔]は[燥苔]

処方例

漢方

滋陰降火湯(じいんこうかとう)

精油

カモミール・ジャーマンローズウッド

[大腸湿熱](だいちょうしつねつ)

[大腸]に[湿熱]が生じている状態です。ウイルスなどの[外感湿邪]が原因の場合もあります。脂っぽいもの・甘いもの・お酒・辛い物の摂りすぎが原因でなる場合もあります。[湿熱邪]を取り除く[清利湿熱](せいりしつねつ)という治法を行います。

症状

残便感、すっきり便が出ない、腹痛、膿血交じりの下痢、[口渇]、尿が黄色で少量、[裏急後重感](りきゅうこうじゅうかん)など

舌の状態

[舌質]は紅色、[舌苔]が[黄苔]、もしくは[膩苔]

処方例

漢方

葛根黄連黄苓湯(かっこんおうれんおうごんとう)

精油

グレープフルーツサイプレスライム

[大腸津虚](だいちょうしんきょ)

[津液]不足によって、[大腸]が乾燥している状態です。熱病の後や、老化、[先天不足]、出産などが原因で起こります。[大腸]を潤し、便通を良くする[潤腸通便](じゅんちょうつうべん)という治法を行います。

症状

便秘、コロコロ便、[口渇]、腹痛、唾液が少ない、など

舌の状態

[舌質]は乾燥、[舌苔]は[燥苔]

処方例

漢方

麻子仁丸(ましにんがん)

精油

カモミール・ジャーマンカモミール・ローマンローズウッドサンダルウッドフランキンセンス




次はこれを要チェック

漢方一覧 生薬一覧 舌から不調をチェック 東洋医学の基本 東洋医学の言葉の意味 五臓六腑 精油の作用一覧