Oriental Medicine,  診断

舌から不調を診断する方法|東洋医学の実践

舌から不調を診断する方法

これまで東洋医学の基本的な概念の説明と、どのように不調を診断していくかを説明してきました。診断方法には[望診](ぼうしん)・[聞診](ぶんしん)・[問診](もんしん)・[切診](せっしん)の4つの種類があります。その[望診]の中の舌の状態を見る[望舌](ぼうぜつ)もしくは[舌診](ぜっしん)と呼ばれる方法の説明をしていきます。これまでの詳しい説明は下記をご覧ください。

東洋医学の実践法

※図や表以外で、東洋医学の言葉は全て[ ]の中に表しています。例えば、[心]は東洋医学での[心](しん)を表し、普通に心と書いてある場合は、通常の「こころ」を表しているとお考え下さい。そして[ ]内の言葉はまとめて東洋医学の言葉一覧のページで意味を調べられます。

目次

  1. 舌診とは
  2. 舌の位置と不調
  3. 舌質
  4. 舌苔



舌診とは

舌質(ぜっしつ)
動き
舌苔(ぜったい)

上の表のように、舌診でチェックするポイントは5つあります。まず、舌診ではみる場所が2つあります。舌の質をみる[舌質]と舌の苔をみる[舌苔]です。そして[舌質]では、舌の色・形・動きをみます。[舌苔]では苔の色と質をみていきます。実際にどんな状態がどんな不調につながっているのかを見ていきましょう。

舌の位置と不調

[舌質]と[舌苔]を見る前に、まず下の位置と[臓腑]の関係について説明します。どの部分に舌の症状が出ているかによっても、どの[五臓]の不調かが分かります。

五臓六腑

舌の場所と名前

舌の中心を[舌中](ぜっちゅう)、舌の先の方を[舌尖](ぜっせん)、舌の両側を[舌辺](ぜっぺん)、舌の奥を[舌根](ぜっこん)と言います。

舌の場所と[臓腑]の関係

そして、舌の中心[舌中]は[脾]と[胃]に結びつき、舌の先[舌尖]は[心]と[肺]、舌の脇[舌辺]は[肝]と[胆]、舌の奥[舌根]は[腎]が対応しています。



舌質

次に舌質をみていきます。舌は直前の食べ物や飲食物によってもすぐに色が変わってしまうので、注意が必要です。また、光の色によっても白っぽく見えたり黄色っぽく見えたりするので、照明にも気を付けてください。

舌の色

淡紅 淡白
通常 気虚血虚 実熱・虚熱 瘀血

正常な舌の色は淡紅になります。淡く白っぽい色の場合は、[気虚]か[血虚]が考えられます。紅色の場合は、より鮮やかな赤色の場合は[実熱]で、暗紅色の場合は[虚熱]になります。[熱邪]が強いほど赤みが強くなります。紫色の場合は、[瘀血]が考えられます。紫と言っても、青紫色っぽい場合もあります。また、黒や茶っぽい斑や点々のように見える、[瘀斑](おはん)や[瘀点](おてん)がある場合があります。

舌の形

正常  
痩薄(そうはく)  気虚血虚
陰虚
胖大(はんだい) 気虚陽虚水滞
湿熱
歯痕(しこん) 脾虚気虚
裂紋(れつもん) 気虚血虚
陰虚
点刺(てんし) 舌尖:心熱
舌辺:肝熱
舌中:胃熱

[痩薄](そうはく)

[痩薄]とは、舌が通常より薄くて痩せている状態です。[痩薄]でかつ舌の色が淡白の場合は[気虚]もしくは[血虚]の状態です。舌の色が紅色の場合は[陰虚]の状態です。

[胖大](はんだい)

[胖大]とは、下が大きくて腫れぼったく厚みがある状態です。口の幅よりしたの幅の方が大きいように見えます。[胖大]でかつ舌の色が淡白の場合は[気虚]、[陽虚]、[水滞]のどれかの状態です。舌の色が紅色の場合は[湿熱]の状態です。

[歯痕](しこん)

[歯痕]とは、舌のふちに歯型が付いている状態です。ふちが波打っています。体調とは関係なく、歯並びが悪くて舌の形が変形している場合もありますが、その場合は左右非対称です。[歯痕]は[脾虚]もしくは[気虚]の状態です。

[裂紋](れつもん)

[裂紋]は、舌の表面に亀裂が入っている状態です。舌の色が淡白の場合は[気虚]か[血虚]、舌の色が紅色の場合は[陰虚]です。

[点刺](てんし)

[点刺]は、舌の表面がざらざらしていて、トゲのように突き刺さる感じがあります。赤い点々があります。[点刺]ができている場所が舌の先っぽの[舌尖]の場合、[心熱]の状態です。舌の横、[舌辺]に出来ている場合は[肝熱]、舌の中心[舌中]に出来ている場合は[胃熱]です。

舌の動き

顫動(せんどう) 気血両虚・肝風内動
歪斜(わいしゃ) 肝風内動・中風
弄舌(ろうぜつ) 心熱・胃熱・中風の前兆・小児の発達遅れ
吐舌(とぜつ) 脾陽虚

[顫動](せんどう)

[顫動]は舌が震えている状態です。[気血両虚]か[肝風内動]が考えられます。

[歪斜](わいしゃ)

[歪斜]は舌を出したときに左右どちらかに歪んでいる状態です。倒れる寸前などにこの舌の状態になることがあります。[肝風内動]や[中風]が考えられます。[中風]とは脳卒中のことです。[内風]が[経絡]を侵して、中枢神経に障害が出ることを言います。

[弄舌](ろうぜつ)

[弄舌]は口の中で絶えず舌を動かしていたり、唇を繰り返し舐める状態です。[心熱]、[胃熱]、[中風]の前兆、小児の発達遅れなどが考えられます。

[吐舌](とぜつ)

[吐舌]は舌を唇の外にたらしたままで、口の中に戻す力が無い状態のことです。[脾陽虚]が考えられます。

舌苔

次に舌の苔の状態を見ていきます。

苔の色

白苔 黄苔 灰・黒苔
寒証 熱証 裏証

[白苔](はくたい)

[白苔]→[黄苔]→[灰・黒苔]の順に不調の重症度が上がります。[白苔]は[寒証]の状態です。

[黄苔](おうたい)

[黄苔]は[熱証]の状態です。[胃]に熱があるときが多いです。色が濃くなればなるほど[熱邪]が強くなります。

[灰・黒苔](はい・こくたい)

[灰・黒苔]は[裏証]の状態で、かなり重症の場合が多いです。

苔の質

苔の質は下記に8種類あげています。

薄苔(はくたい) 正常、または虚証
厚苔(こうたい) 邪盛
剥苔(はくたい) 気虚血虚陰虚
無苔(むたい) 重度な気虚血虚陰虚
燥苔(そうたい) 津虚陰虚
滑苔(かったい) 水滞
膩苔(じたい) 水滞・痰飲
腐苔(ふたい) 湿熱胃熱・食積

[薄苔](はくたい)

[薄苔]は苔が少ない状態です。正常、または[虚証]が考えられます。

[厚苔](こうたい)

[厚苔]は苔が厚い状態です。[邪]に体調が侵されている状態です。

[剥苔](はくたい)

[剥苔]は苔の一部が剥がれ落ちている状態です。[気虚]・[血虚]・[陰虚]が考えられます。

[無苔](むたい)

[無苔]は苔が無く、つるつるしている状態です。重度の[気虚]・[血虚]・[陰虚]が考えられます。胃の消化力が無く、一色食べられなような人が当てはまります。

[燥苔](そうたい)

[燥苔]は苔が乾燥している状態です。[津虚]・[陰虚]が考えられます。

[滑苔](かったい)

[滑苔]は苔が唾液に覆われている状態 です。[水滞]が考えられます。

[膩苔](じたい)

[膩苔]は苔が厚く、べったり下についてぬぐえない状態です。[水滞]・[痰飲]が考えられます。

[腐苔](ふたい)

[腐苔]は豆腐のかすのような付着物がある状態です。[湿熱]・[胃熱]・[食積]が考えられます。




次はこれを要チェック

顔から不調をチェック 気血津液弁証 臓腑弁証 八綱弁証 東洋医学の言葉の意味 東洋医学の基本