各漢方薬の効能

温裏剤の漢方薬|東洋医学の薬剤

温裏剤一覧

温裏剤(おんりざい)とは、寒証の病証の改善に使用する漢方薬です。漢方薬にはいろいろな効能があるので、分類方法には場合によって違いがあるかと思います。各漢方薬の詳細は下記をご覧ください。副作用や組み合わせによる注意点がある場合が殆どですがここには記載しておりません。実際に使用する場合は、必ず専門の医師に相談してお使いください。

※図や表以外で、東洋医学の言葉は全て[ ]の中に表しています。例えば、[心]は東洋医学での[心](しん)を表し、普通に心と書いてある場合は、通常の「こころ」を表しているとお考え下さい。そして[ ]内の言葉はまとめて東洋医学の言葉一覧のページで意味を調べられます。

目次

  1. 安中散
  2. 黄耆建中湯
  3. 帰耆建中湯
  4. 呉茱萸湯
  5. 小建中湯
  6. 大建中湯
  7. 当帰建中湯
  8. 当帰四逆加呉茱萸生姜湯
  9. 当帰四逆湯
  10. 当帰湯
  11. 人参湯
  12. 豆知識



1.安中散(あんちゅうさん)

冷えてお腹が痛む場合によく使われる処方です。お腹を温め痛みを緩和させます。夕食が遅い時、夜食を取った時等に寝る前に処方すると、朝に胃腸の症状が楽になります。

八綱弁証 裏証・寒証・虚証・陽虚
気血水弁証 気滞気逆
臓腑弁証

組成

桂皮牡蠣縮砂延胡索茴香良姜甘草

体質

体力中等度以下

適応症

腹部に力がない、胃痛か腹痛がある、胸やけ、げっぷ、胃もたれ、食欲不振、吐き気、嘔吐などになりやすい人に向いています。そのような人の神経性胃炎、慢性胃炎、胃腸虚弱などに。

2.黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)

小建中湯に黄耆を加えたものです。黄耆は発汗過多を調整します。小建中湯よりも[気虚]が進んだ場合に用います。倦怠感、息切れ、動悸、腹痛、手足の痛みなどの症状があります。

八綱弁証 裏証・寒証・虚証
気血水弁証 気虚
臓腑弁証

組成

桂皮芍薬生姜大棗甘草黄耆、(膠飴

体質

体力虚弱、疲労しやすい

適応症

病後の衰弱、寝汗、湿疹、皮膚炎、皮膚のただれ、腹痛、冷え性などに向きます。

3.帰耆建中湯(きぎけんちゅうとう)

胃腸がかなり虚弱な人向けの処方です。[気虚]と[血虚]両方がある場合に向きます。それに伴う慢性的な皮膚疾患や中耳炎などにも応用されます。

八綱弁証 裏証・寒証・虚証
気血水弁証 気虚血虚
臓腑弁証

組成

当帰黄耆桂皮芍薬生姜大棗甘草、(膠飴

体質

体力虚弱、疲労しやすい

適応症

病後や術後の衰弱、寝汗、湿疹、皮膚炎、化膿性皮膚疾患などに向きます。

4.呉茱萸湯(ごしゅゆとう)

胃や体をあたためて頭痛を改善します。片頭痛やそれに伴う吐き気によく用いられます。

八綱弁証 裏証・寒証・虚証
気血水弁証 気虚気逆水滞
臓腑弁証

組成

呉茱萸人参大棗生姜

体質

体力中等度以下

適応症

手足が冷えて肩がこり、たまにみぞおちが膨満する、などになりやすい人に向いています。そのような人の頭痛、頭痛に伴う吐き気・嘔吐、しゃっくりなどに。

5.小建中湯(しょうけんちゅうとう)

胃腸が弱い人の[補気]剤です。膠飴が入っていることで消化しやすくなっています。甘味があるので、小児の虚弱体質の改善にもよく用いられます。

八綱弁証 裏証・寒証・虚証・陽虚
気血水弁証 気虚
臓腑弁証

組成

桂皮芍薬生姜大棗甘草膠飴

体質

体力虚弱、疲労しやすい

適応症

腹痛があり血色が悪く、たまに動悸や手足のほてりがあり、冷え、寝汗、鼻血、頻尿や多尿などになりやすい人に向いています。そのような場合の小児性虚弱体質、疲労倦怠感、慢性胃腸炎、腹痛、神経質、小児夜尿症、夜泣きなどに向きます。



6.大建中湯(だいけんちゅうとう)

お腹が冷えて痛む場合の処方です。腸管を温めて、胃腸の働きを活発にし、冷えからくる痛みや張りを改善します。冷えて下痢になる場合は人参湯が向きます。

八綱弁証 裏証・寒証・実証・虚証・陽虚
気血水弁証 気逆
臓腑弁証

組成

人参山椒乾姜膠飴

体質

体力虚弱

適応症

お腹が冷えて痛みやすい人に向いています。そのような人の下腹部痛、腹部膨満感などに。

7.当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)

小建中湯に当帰をプラスしたものです。当帰は[血]を補う作用があります。消化機能を高めながら、[血]を補っていきます。そのため[血虚]による冷え、月経痛、月経不順などに用いられます。

八綱弁証 裏証・寒証・虚証
気血水弁証 気虚血虚
臓腑弁証

組成

当帰芍薬桂皮生姜大棗甘草、(膠飴

体質

体力虚弱、疲労しやすい、血色が悪い

適応症

月経痛、月経困難症、月経不順、腹痛、下腹部痛、腰痛、痔、脱肛の痛み、病後や術後の体力低下などに用いられます。

8.当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

[血虚]による手足の冷えに使います。当帰四逆湯に呉茱萸と生姜をプラスし、温める作用を強くしています。呉茱萸と生姜により、吐き気や頭痛も緩和させます。

八綱弁証 裏証・寒証・虚証・陽虚
気血水弁証 血虚血寒
臓腑弁証

組成

当帰芍薬桂皮木通細辛甘草大棗呉茱萸生姜

体質

体力中等度以下

適応症

手足の冷えがあり、特に足の冷えが強く、足や下腹部が痛くなりやすい人に向いています。そのような人の冷え性、しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛、下痢、月経痛などに。

9.当帰四逆湯(とうきしぎゃくとう)

[血虚]による手足の先、下腹部の冷え、痛みに用います。[血虚]は寒冷刺激に弱く、身体の奥まで冷えが浸透します。[血]を補いながら手足の先まで温かくする作用があります。

八綱弁証 裏証・寒証・虚証・陽虚
気血水弁証 血虚血寒
臓腑弁証

組成

当帰芍薬桂皮細辛木通甘草大棗

体質

体力中等度以下

適応症

手足が冷えて下腹部が痛くなりやすい人に向いています。そのような人のしもやけ、腰痛、下痢、月経痛、冷え性などに。

10.当帰湯(とうきとう)

胃腸を保護しながら[気血]を補い温める処方です。腹部を温め、冷えによる胸腹背部の痛みを和らげます。胃腸が虚弱の為に、補血薬がもたれてしまう場合にも向いています。

八綱弁証 裏証・寒証・虚証
気血水弁証 気虚血虚
臓腑弁証

組成

当帰半夏桂皮芍薬厚朴人参黄耆乾姜山椒甘草

体質

体力中等度以下

適応症

背中に冷感があり、腹部膨満感や腹痛、胸背部通といった症状がある人に向いています。そのような人の胸痛、腹痛、胃炎に。

11.人参湯(にんじんとう)

胃腸虚弱で疲れやすい人で、冷えて下痢になる場合の処方です。大建中湯と同じく、胃腸をあたためて症状を改善しますが、大建中湯の場合は痛みや便秘に、人参湯は下痢に用います。

八綱弁証 裏証・寒証・虚証・陽虚
気血水弁証 気虚
臓腑弁証

組成

人参甘草白朮蒼朮でも可)、乾姜

体質

体力虚弱

適応症

疲労しやすい、手足が冷えやすい人に向いています。そのような人の胃腸虚弱、下痢、嘔吐、胃痛、腹痛、急性・慢性胃炎に。

豆知識

ここでは○○建中湯という薬剤が沢山出てきましたので整理してみます。

建中とは?

建中とは、「中」を建てるという意味です。「建てる」は丈夫にすること、「中」とは、[三焦]の中の[中焦]、つまり[脾][胃]のことを指します。もしくはお腹を意味します。そのため、建中湯とつくものは[脾]や[胃]、お腹のトラブルを温めて改善するような効果があります。

生薬のブレンドの違い

桂枝加芍薬湯の生薬配合(桂皮大棗生姜芍薬甘草)がベースにあります。そこから何をプラスするかによっていろいろな種類があります。大建中湯のブレンドはこれらとは異なります。




次はこれを要チェック

ハーブの効果効能一覧 東洋医学の基本 東洋医学の応用