油脂の基本

飽和脂肪酸とは?|特徴・種類・化学構造・摂取の注意など

飽和脂肪酸とは?

飽和脂肪酸とは、二重結合や三重結合がない脂肪酸のことをいいます。水素(H)が炭素(C)に対して飽和しているので、安定した構造を持っています。このページでは、飽和脂肪酸の化学構造や特徴、摂取時の注意点、関連する脂肪酸や油脂について説明していきます。

目次

  1. 飽和脂肪酸の化学構造
  2. 飽和脂肪酸の特徴
  3. 飽和脂肪酸の摂取の注意点
  4. 飽和脂肪酸の13種類の具体例
  5. 飽和脂肪酸を多く含む11種類の植物油脂



飽和脂肪酸の化学構造

飽和脂肪酸は、二重結合が無い化学構造です。下の化学構造は炭素(C)が18個のステアリン酸の例になります。数字は炭素の数を表示しています。炭素(C)18個に、水素(H)が均等に飽和して結合しています。飽和脂肪酸は炭素(C)の数が違うだけで、このように安定した化学構造になっています。下のステアリン酸を数値で表すと、C18H36O2C18:0などと表します。C18:0は、炭素(C)が18個と、二重結合が0個という意味です。

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飽和脂肪酸の特徴

融点が高い

飽和脂肪酸は、不飽和脂肪酸に比べて融点が高い性質があります。そのため、飽和脂肪酸の割合が多い油脂は、常温で固体のものが多く存在します。植物油脂の分類で詳しく紹介していますが、常温で固体のものは同じ油脂でも「脂肪」に分類されます。飽和脂肪酸はこの「脂肪」にあたるものが多くなります。

動物性の油脂に多い

飽和脂肪酸は、乳製品や肉のなかの脂肪などの動物性油脂に多く含まれます。動物は体温が高いので、油脂の融点も高い傾向にあります。

酸化しにくい

飽和脂肪酸は安定しているので、酸化しにくい性質があります。酸化は酸素や光、水など様々な原因によって進みます。その際に二重結合が多いほど、進み具合が早くなります。飽和脂肪酸は二重結合がないため、飽和脂肪酸がメインの油脂は、酸化がとても遅くなります。

加熱に強い

飽和脂肪酸が多い油脂は、酸化しにくい、つまり加熱に強い性質があります。揚げ物や炒め物をする場合や、加熱をして化粧品を作る場合など、飽和脂肪酸が多い油脂は劣化しにくいので安心できます。しかし、飽和脂肪酸は摂りすぎると別なところで不調につながる可能性があるので使いすぎには注意が必要です。

粘性が高い

飽和脂肪酸が多い油脂は、粘性が高く、ドロッとしている特徴があります。そのため、肌に使用すると重い質感になるものが多いです。粘性が高いので、肌への浸透が遅かったり、しずらいものが多いです。

飽和脂肪酸の摂取しすぎに注意

飽和脂肪酸の少なすぎのリスク

飽和脂肪酸は少なすぎても摂りすぎても、様々な疾患の原因になると言われています。少なすぎると、脳出血罹患のリスクや生活習慣病のリスクが高まると言われています。また、総死亡率、がん死亡率、冠動脈死亡率、脳卒中死亡率は高まるという調査結果が出ています。

飽和脂肪酸の摂取しすぎのリスク

逆に、総和脂肪酸の摂取のし過ぎは、血中の悪玉コレステロールが増加し、動脈硬化の原因になると言われています。また、肥満やインスリン抵抗性に影響を及ぼし、糖尿病のリスクを高めるとも考えられています。乳がんとの関連も若干ながら認められている調査もあります。

理想の摂取量

飽和脂肪酸は、少なすぎでも多すぎでも健康に影響を及ぼすため、厚生労働省では上限と下限を設定しています。一日の飽和脂肪酸の摂取量の理想は、総エネルギーの4.5%~7%になります。グラムで表すと、総エネルギーが1日2000Kcalの人の場合、1日の飽和脂肪酸摂取量は10g~15.6gになります。

知らないところで沢山使われている

飽和脂肪酸が多く含まれた動物性油脂や植物性油脂は安価で安定しているため、外食産業や食料品の至る所で使用されています。例えば、レストランで使われる油の多くはラードなどの動物性油脂です。また、アイスクリームやレトルト食品をスーパーで買うと、それらに使われているほとんどの植物性油脂がパーム油です。どれも飽和脂肪酸がメインの油脂になります。そのように考えると、私たちは知らずにとてもたくさんの飽和脂肪酸を毎日口にしています。例えば、1杯のカップラーメンの中に、油分は少なくとも2og以上は含まれているので、飽和脂肪酸の1日の上限15gというのは、私たち日本人にとっては意識しないと簡単に超えてしまう数値なのです。




飽和脂肪酸の具体例

脂肪酸 分子式 分子量 数値表現
ブチル酸 C4H8O2 88 C4:0
カプロン酸 C6H12O2 116 C6:0
カプリル酸 C8H16O2 144 C8:0
カプリン酸 C10H20O2 172 C10:0
ラウリン酸 C12H24O2 200 C12:0
ミリスチン酸 C14H28O2 228 C14:0
ペンタデシル酸 C15H30O2 242 C15:0
パルミチン酸 C16H32O2 256 C16:0
マルガリン酸 C17H34O2 270 C17:0
ステアリン酸 C18H36O2 284 C18:0
アラキジン酸 C20H40O2 312 C20:0
ベヘン酸 C22H44O2 340 C22:0
リグノセリン酸 C24H48O2 368 C24:0

飽和脂肪酸が多い植物油脂

動物性油脂の他に植物性油脂にも飽和脂肪酸が多いものがあります。飽和脂肪酸は融点が高い特徴があるので、常温で固体の「脂肪」に分類される植物油脂は、基本的に飽和脂肪酸が多いタイプです。シアバター等のように、「バター」と呼ばれる場合もあります。

植物油脂 飽和脂肪酸の割合
ウクウババター 約100%
ナツメグバター 約90%
ココナッツオイル 約89%
パーム核油 約81%
ババスオイル 約81%
ココアバター 約59%
コクムバター 約59%
マンゴーバター 約55%
グレープフルーツシードオイル 約52%
パーム油 約49%
シアバター 約45%
クプアスバター 約43%




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