油脂の基本

脂質の種類|油脂・油・脂・バター・ワックス・・呼び方の定義は?

脂質の分類

油、脂肪、油脂、バターなど、オイルには様々な言い方があります。場合によっては同じものを指していたり、違う場合もあります。このサイトでは、アロマやハーブのレシピなどをお伝えする際に、沢山の植物油脂を紹介しています。その際にこの分類が大切なことがあるので、詳しく説明していきます。



脂質の分類と説明

名称によって分類したまとめが下の表になります。

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脂質

脂質とは、例外もありますが簡単にいうと、生物の体内で作られ、水に溶けない性質を持つもののことを言います。(一部水にもなじむものもあります。)私たちが普段使う油、脂肪、ワックスといったものを含めた一番広義のイメージです。脂質は更に、単純脂質・複合脂質・誘導脂質に分けられます。

複合脂質と誘導脂質

複合脂質は分子中にリンや糖を含む脂質のことで、リン脂質糖脂質などを指します。複合脂質は水にも油にもなじむ、両親媒性を持つものが多いです。誘導脂質は単純脂質と複合脂質から加水分解によって誘導される化合物のことを指します。水に溶けない疎水性で、脂肪酸コレステロールなどがそれに当たります。

単純脂質

単純脂質は脂肪酸とアルコールのエステルのことを指します。私たちが食事や美容に使用している植物性の油・脂肪・ワックスはこの単純脂質に分類されます。そもそもエステルとは何かというと、有機酸とアルコールが縮合反応して生まれる化合物のことを指します。一般的にエステルというと、カルボシキ基[-COOH]をもつ有機酸である、カルボン酸[R-COOH]とアルコール[R’-OH]から縮合反応(脱水縮合)してできる(=H2Oが無くなって結合する)カルボン酸エステル[R-COO-R’]を指します。この結合の仕方をエステル結合とも言います。動物性、植物性のオイルに含まれる脂肪酸は、カルボン酸の一種です。この流れを式で表すと下記になります。

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このような段階を経てできる単純脂質は、さらに「油脂」か「ワックス」かの2つに分けられます。

油脂、トリアシルグリセロール

fat1油脂トリアシルグリセロールともいい、1分子のグリセロール(グリセリン)に3分子の脂肪酸がエステル結合してできたもののことを言います。グリセロールは三価のアルコールなので、3つの脂肪酸と結合します。更にそれが常温で液体のものを「」もしくは「脂肪油」と言い、常温で固体のものを「脂肪」や「中性脂肪」、「脂(あぶら)」、「バター」と言います。オリーブオイルやアーモンドオイルといった液体のものは「油」になり、ココナッツオイルやシアバターなど、常温で固形のタイプは「脂肪」に分類されます。固形か液体かというだけで、2種とも脂肪酸とグリセロールのエステル結合であることは変わりありません。食用や化粧品の原料となる油やオイルと呼ばれるものの多くは、この油脂の分類に当てはまります。

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※単純脂質の項目のR’がグリセロールのC3H5の部分に当てはまります。

ワックス、ワックスエステル

ワックスは、脂肪酸と、一価または二価の脂肪族アルコール(高級アルコール)が結合してできたエステルのことです。ワックスエステルとも言います。通常液体のワックスはホホバオイルが挙げられ、通常固体のものは、蜜蝋が挙げられます。ワックスは、油脂と同じエステルの一種で、脂肪酸とアルコールが結合しますが、その結合するアルコールの種類が違います。油脂は脂肪酸とグリセロール、ワックスの場合は、脂肪酸と脂肪族アルコールが結合します。脂肪族アルコールは高級アルコールとも言われるように、グリセロールより多い炭素数を持つアルコールです。

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※一価脂肪族アルコールの場合

その他のオイル

動物性のオイル

動物性のオイルは、化学的には植物性のオイルの「油脂」と同じ分類になります。殆どが脂肪酸とグリセロールが結合してできている油脂です。植物性のオイルよりも融点が高く、通常固形の場合が多いため、「脂肪」に分類されるものが多いのが特徴です。ラードや馬油などが上げられます。融点が高いということは、飽和脂肪酸が多いということも意味します。飽和脂肪酸は適度な量では体にいいものの、摂取し過ぎは心筋梗塞や糖尿病といったリスクを増加させると言われています。加工品や外食ではたくさん動物性のオイルが使われているので、意識的に植物性のオイルを摂るようにしていった方がいいと言われています。飽和脂肪酸に関しては「飽和脂肪酸とは?」のページをご覧ください。

鉱物油、ミネラルオイル

その他、よく耳にするオイルに、鉱物油(ミネラルオイル・鉱油)というものがあります。石油由来のオイルになります。これは動物性や植物性のオイルとはまた違う性質のものになります。それらより重い炭化水素から成り、化合物の構造自体が異なってきます。工業の分野で多く使われていますが、化粧品の原料にもなっています。植物性のオイルのように、特に体にいい有効成分が含まれているわけではありません。分子が大きいので、肌に浸透することがなく、皮膚の表面にとどまることから、潤滑剤、保湿剤などとして使用されます。ワセリンが鉱物油の一例です。高度に精製され不純物が無くなっているので、ベビーオイルの原料にもなっています。




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