Yoga

自分自身の知識を得るということ|ヨーガ・アーユルヴェーダ・インド哲学

タットヴァボーダ No.67-71

ヨーガやアーユルヴェーダの理論のもととなっているインド哲学「ヴェーダ」の起源は約5000年前にさかのぼります。宇宙の法則、私たちが生きている世界の本質が詰まっています。その一部をわかりやすく初心者用に説明しているものがタットヴァボーダ(Tattva Bodha)です。ヨーガ、アーユルヴェーダのもととなる基本的な考え方を理解するにあたって、とても重要です。このサイトでは、そのタットヴァボーダの内容をサンスクリット語の訳に沿いながら説明しています。グリーンで囲われている部分がサンスクリット語の日本語訳です。ここでは67章から71章にあたる、自分自身の知識の最後のまとめの部分です。タットヴァボーダの全体像について知りたい場合は下記をご覧ください。

インド・ヨーガ哲学

目次(67章~71章)|自分自身の知識を得るということ



自分自身の知識を得るということ

これまでのタットヴァボーダの内容とのつながりを復習します。まず、タットヴァボーダのテーマがあり、それを学ぶために必要な資質を説明しました。そしてタットヴァボーダの一番のテーマである、アートマー(自分自身、真我)にはどんな特徴があるのかを15,16章説明しました。17章以降はその特徴を1つずつ説明しています。43章からは、宇宙の構造の話になります。仕組みはどのようになっていて、どのようにできたのかを説明していきました。60章からは悟りについて、自分自身の知識を得るとどうなるかの説明です。

No.67|サンチタカルマが解消

サンチタカルマは、「私はブランマンである」という知識によって解消されます。

解説

「私はブランマンである」という知識を得るということは、自分が限りのない意識であることを知っています。自分は有限で、変化し、耐える存在だ、という概念が無くなります。楽しみや苦しみを経験する肉体を自分と同一視し、行動を自分のものとすることはありません。そのため、行動の主語が無くなってしまっているので、結果を得ることも不可能です。

肉体の死後はどうなるか?

死んだ後、グロスボディー(肉体)は無知の人も賢者も同様、五大元素に戻ります。無知の人のサトルボディーは、グロスボディーを去り、行いの結果に従って新しいグロスボディーに溶け込みます。賢者のサトルボディーは、サトルレベルの五大元素に融合されます。コーザルボディーは自分自身の知識によって消滅します。これは空間と似てます。家には空間があり、それの空間は家の中です。しかし、家が壊されると、家の空間は外の空間と一体化します。実際に一体化の反応が起こったわけではありません。空間は常に1つで全てにいきわたってるのです。そのため、賢者はまた生まれ変わることはありません。意識そのものとして存在し続けます。もし再び生まれてくることを望めばそれも可能です。その場合は、社会のモデルになるような存在として生まれてきます。

No.68 |アーガーミカルマが解消

アーガーミカルマもまた、知識によって解消されます。蓮の葉が水の影響を受けないように、ニャーニ(賢者)はアーガーミカルマに影響されることがない。

解説

賢者は、サンチタカルマと同様アーガーミカルマの影響も受けません。自分が、今行っている行為の行い手であるという概念がないので、その結果である楽しみや苦しみにも影響を受けません。池で生きる蓮の葉が水に濡れないように、賢者は行いの中心にいても、それに影響されていません。

No.69 |悟った人のカルマの行方

さらに、ニャーニを誉め、使え、崇拝する人のところへ、ニャーニが行った良い行動の結果が行きます。ニャーニを批判し、嫌い、苦しめる人のもとには、ニャーニが行った称賛されない、罪深い行動の結果が行きます。

解説

賢者はサンチタカルマの結果から解放されています。しかし過去に賢者が行った行いの結果は、必ずどこかに現れるはずです。一度放った矢を止めることはできません。その結果はどうなるのでしょうか?賢者のプンニャは、賢者を称え、尊敬し、理解する人のもとへ行きます。逆に賢者のパーパは、批判し、苦痛を与える人のもとへ行きます。このようにして賢者のカルマが解消されていきます。

No.70 |全ての苦しみからの超越

このように、自分自身の知識を得た者は、サムサーラを超え、この世で最高の至福に達します。シュルティはこう断言します。「自分自身知識を知るものは、すべての悲しみを超越する」。ニャーニの体がカシ(聖なる場所)や犬を食べる家(モラルのない家)に投げ捨てられても、どちらも取るに足りないことです。なぜなら知識を得たときに彼は解放され、すべての行動の結果から自由になっているからです。そうスムルティもまた断言しています。

解説

シュルティとは、原典としてのヴェーダのことです。スムルティとは、タットヴァボーダのように聖者によってヴェーダの本質が忠実にまとめられた聖典のことです。

サムサーラとは、永遠に変化する生と死の繰り返しです。また、時間、空間、物質全ての領域のことです。制限は悲しみの源です。しかし自分自身の知識を得た人は、時間、空間、物質の制限を超越し、永遠という、最高の至福にたどり着きます。

私たちは死を恐れ、良い死を願います。眠るように死にたいなど、どのように死ぬかを大切にする人もいます。ある人は、カシというガンジス川近くの聖なる場所で死ぬと、解脱できると信じます。しかし、賢者は死ぬ前にもう悟りを得ているので、どんな場所に体があっても関係ありません。

No.71 |終わり

これでタットヴァボーダの教えが終わりました。

解説

ヴェーダンタの知識の基本の基本を分かりやすく説明している、タットヴァボーダの説明が終わりました。ヨーガ、アーユルヴェーダを学んでいる人にとってとても重要なことはもちろん、全ての人にとって活かせる知恵であることは間違いありません。一度で理解できる内容ではないので、何度も読み返してみてください。さらに理解が深まるごとに、記事はアップデートしていきます。




次はこれを要チェック

タットヴァボーダ目次 ヨーガとは アーユルヴェーダの歴史 アーユルヴェーダの基本




『VEDANTA BOOK OF DEFINITIONS』 Swami Tejomayananda