油脂の基本

植物油脂は危険?安心安全に選ぶポイントと使い方を伝授!

植物油脂は危険?

植物油脂は、様々なメディアで体にいいことを強調されたり、かと思えば全く逆に、危険と強調されたりしています。植物油脂に限らず多くの商品でそのような矛盾する情報が流れていて、困惑してしまうことも多いかと思います。どんなものも、商品の質や、使い方、使用する量などによって、体にいいものにもなれば悪いものにもなります。植物油脂には、一番一般的なオリーブオイルをはじめとして、基本的に体にいい成分が沢山含まれています。ここでは植物油脂の何が危険と言われているか?をまとめ、安全に健康に選び、使用するポイントを紹介します。

植物油脂が危険と言われる5つのポイント目次



Point 1: 酸化した油脂

油の酸化は、他の食品と同じように、普通に保存していても進みます。さらに加熱をすると早く進みます。油が酸化すると、過酸化脂質というものが発生し、それが身体によくない作用を及ぼします。当たり前ですが、劣化してしまった油を使用することは、どんなにいい油を使っていてもよくありません。油の酸化についての詳細は下記を参照ください。

油の酸化

Point 2: 抽出過程での成分の変化と化学成分の付加

植物油脂は、その抽出方法によってかなり質の違いが出てきます。手間がかかるので、値段が高い場合も多いですが、一番安心できる抽出法は、「一番搾りの低温圧搾法」です。その他の抽出法でも、こだわっている商品や、そもそも低圧搾では抽出できないものもあるので、一概によくないとは言えません。しかし、その抽出過程で、中には体に良くないものが添加されている場合が多くあることを知っておくことが大切です。

低温圧搾法

低温圧搾法は、昔ながらの方法で、一番安全な油脂の抽出方法になります。植物からの有効成分が殆どすべて含まれた油脂になります。種子や実を採取し、選別後、圧搾して油脂を抽出します。この際、「低温圧搾」というための温度の規定は国によって様々なようです。65℃以下という規定の場合もあれば、40℃以下がいいと言われる場合もあります。もちろん低い方が成分を破壊しないので、品質は良くなります。

高温圧搾

高温圧搾法は、低温と同じく圧搾してオイルを抽出します。しかし、油脂が抽出しやすいように、種子や実を粉砕し、加熱処理してから圧搾する方法です。このようにして抽出された油脂は、樹脂などの不純物が含まれ、色が濃く、香りも強いので、次の項目で紹介する精製の加工が必要となります。さらに高温で圧搾するので、熱に弱い成分はなくなってしまっています。また、どれくらいの高温にするかにもよりますが、「油の酸化」のページで詳しく説明したように、油脂は臨界温度以上まで熱すると有害物質やトランス脂肪酸が生じます。高温にさらされるこの圧搾法の場合、そのような有害な物質が含まれてしまう可能性があります。

溶剤抽出法

溶剤抽出法は、一番気をつけなければならない抽出法です。圧搾法では抽出しにくい油脂や、一番搾りで残った搾りかすから、さらに油脂を抽出する場合に多く用いられます。一番搾りで油脂が絞られても、まだ残りの搾りかすには沢山の油脂が含まれています。このような場合は、特別な溶剤を使わないと油脂を抽出できません。

使われる溶剤が危険な場合も

溶剤抽出法で使われる溶剤(溶媒)は、ケトン、ブタン、エタノール、ヘキサン、プロパンなどの有機溶剤や石油系溶剤が挙げられます。特にヘキサンは消防法では危険物であり、毒性を有することが知られています。その他の溶剤も基本的に有毒性があると考えられます。これらの溶剤は精製が終了するまでにほとんど除去されますが、1~2ppmほどは残留すると言われています。

高温にさらされる

溶剤を使用するときは、溶剤を入れたり蒸発させたりするときに、200℃くらいまで高温にする必要があります。そのため、熱に弱い成分は殆どなくなり、かつ有害物質やトランス脂肪酸が生じている可能性があります。

必ず精製加工が必要

溶剤抽出法で油脂を抽出した場合、高温圧搾法と同じように、油脂の中には樹脂や色素などの不純物が混入し、匂いも強く、精製処理をしないと商品になりません。

安全な油脂の抽出法まとめ

一番搾り、低温圧搾で抽出されたものを選ぶ!

Point 3: 精製過程での成分の変化と化学成分の付加

植物油脂には、精製されたもの、未精製のものがあります。一番いいものは、「一番搾り、低温圧搾、未精製」です。肌に使用するマッサージオイルなどに使用する場合は特にです。未精製のものには油脂以外の物質も含まれている可能性があります。信頼できる安全な植物から採取した油脂であれば、それは多くの場合栄養素であり有効成分になります。たまに、せっかく一番搾りの低温圧搾で抽出されているのに、溶剤で精製されてしまっているものがありますので、その場合は精製方法に気を付けてみてください。

精製の過程

精製の過程は沢山あります。基本的な精製方法をお伝えします。これをみると精製の段階で、油脂は何度も高温にさらされ、危険な物質が加えられ、添加物を加えられているかが分かります。

1. 不純物の除去

まず、前述したように、油脂を溶剤抽出や高温抽出した場合、多くの不純物も一緒に抽出してしまっています。それを取り除く作業を遠心分離によって行います。この際に、大切な栄養素であるリン脂質が無くなってしまいます。

2.中和

精製油用の原料となる植物は、低品質の場合が多いです。そのため、遊離脂肪酸が多く含まれています。遊離脂肪酸は苦味や腐食性を油脂に与えます。この過程で苛性ソーダなどを添加し、中和させることによって、遊離脂肪酸は除去されます。ここでもリン脂質などの多くの栄養素が失われます。

3.洗浄

中和後、さらに残った不純物を洗浄します。

4.乾燥

洗浄したものを乾燥させます。

5.脱色・漂白

溶剤抽出や高温抽出で抽出された油脂は濃い色をしているとお伝えしました。ここで脱色が行われます。色素を吸着する活性炭などが混ぜられます。

6.ろ過

脱色に使われるものによって、ろ過を行います。ろ過をする場合は、一定の脂肪酸も一緒に無くなってしまうので、それを避けるために、脱色に化学脱色剤を使う場合もあります。

7.脱臭

まだこの段階では不快な臭いがしています。脱臭の工程では、200℃程まで加熱されます。もしくは塩化亜鉛が使われます。

8.着色料・酸化防止剤・その他栄養素の添加

最後に、美味しそうな色にするために、着色料が添加され、保存期間延長のために酸化防止剤が添加されます。また、精製の段階で無くなってしまったビタミンやミネラルが添加されることもあります。

安全な油脂の精製法まとめ

未精製のものが一番いい!




Point 4: 脂肪酸の摂取のかたより

いい油脂を選べたとしても、その摂取の仕方が極端であれば、健康を害してしまいます。どのように摂取したらいいかをお伝えします。

飽和脂肪酸の摂取量のバランス

飽和脂肪酸は、二重結合がなく、安定しているので、消化されにくい性質があります。摂取のし過ぎは心臓血管系に負担をかけ、心筋梗塞などのリスクが高まるとも言われています。また、糖尿病の原因とも言われています。飽和脂肪酸の多くは動物性の油脂に含まれますが、植物性の油脂、例えばパーム油やココナッツ油などにも含まれます。逆に飽和脂肪酸が少なすぎても、脳卒中のリスクが上昇してしまうので、バランスが大切です。

飽和脂肪酸

リノール酸とα-リノレン酸のバランス

リノール酸とα-リノレン酸は、体に必要不可欠ですが体内で生成されないため、必須脂肪酸ともいわれている欠かせない栄養素です。それぞれオメガ6系脂肪酸、オメガ3系脂肪酸とも言われます。しかしこれらも摂取方法によって「危険」とうたわれてしまいます。リノール酸は体内に取り込まれると変化していき、私たちにとって必要な栄養素を生成します。しかし、リノール酸の摂りすぎで、一部の成分が生成され過ぎると、炎症系の疾患や自己免疫疾患などの原因となる場合があります。そのバランスをとってくれるのがα-リノレン酸です。つまり、体にいいと言って、リノール酸ばかり摂っていいても逆効果で、バランスが大切なのです。リノール酸の摂取量は1日4~5g、α-リノレン酸の摂取量歯1日1.2g以上が理想と言われています。そしてオメガ3系とオメガ6系の脂肪酸の比率は、1:1~1:5がいいと言われています。

必須脂肪酸 オメガ脂肪酸

精製油に混入しているトランス脂肪酸に注意

抽出方法と精製の項目で説明したように、多くの精製油は、その工程で高温にさらされます。そのため、高温の過程を経て出来た精製油に含有しているリノール酸やリノレン酸は、体内に必要なシス型ではなく、有害なトランス型になって混入している場合があります。トランス型は飽和脂肪酸のように働き、シス型リノール酸のように体内で有効に働きません。トランス脂肪酸は、精製された植物油脂以外にも外食や出来上がりの食品、マーガリンやショートニングなどにも含まれているので、知らない間に口にしていることがよくあります。できるだけ摂取しないよにすることが大切です。詳しくは下記のトランス脂肪酸のページをご覧ください。

トランス脂肪酸

安全な脂肪酸の摂取法まとめ

一日の摂取量の目安を守る。

Point 5: 原料となる植物の安全性

最後に、どんなに丁寧に作られた油脂でも、そもそもの原材料になっている植物の質が悪ければ意味がありません。他の食べ物と同じように、健康な土地で育った質のいい原料は、その分高い栄養価を持ち、美味しく、私たちの健康によりいい影響を及ぼします。

植物の栽培に使われる化学肥料や化学薬品

化学肥料や化学薬品を大量に使って栽培されている植物は沢山あります。オーガニックでない植物は、化学肥料を加えられた土で育てられ、殺虫剤、除草剤、殺菌剤やダニ駆除剤などを蒔かれながら育ち、かつ収穫されたときにも臭化メチルや酸化エチレンといった化学物質が用いられます。これらの化学物質は、残留して体内に入ると発がん物質になったりするなど、健康に悪影響を及ぼすことが分かっています。

遺伝子組み換え

トウモロコシや菜種、大豆、綿実は遺伝子組み換えのものが多く使われています。植物油脂ではコーン油、ナタネ油(キャノーラ油)、大豆油(ソヤオイル)、コットンシードオイルは特に遺伝子組み換えの原料でないか、表示に気を付ける必要があります。遺伝子組み換えの食物についての危険性はここでは説明を省きますが、健康や環境への多大な悪影響が報告されています。

安全な指標としてのオーガニック

オーガニックや有機栽培と一口にいっても、全く化学肥料を使っていないわけではないですが、そういった認証は、少なくとも化学薬品まみれの原料ではないことが客観的に証明されています。そういった原料から作られた植物油脂が身体にとっても環境にとっても一番いいです。オーガニックについての詳細は「オーガニックの本当の意味」も参考にしてください。

安全な原料のまとめ

オーガニックや無農薬、遺伝子組み換えでない原料が一番いい!

植物油脂を安全&健康に取り入れるポイントまとめ

1.選び方

一番搾り・低温圧搾法・未精製・オーガニック」が理想!

2.保存

酸化しないように、高温多湿を避けた冷暗所に保存

3.加熱

加熱するときは種類ごとの臨界温度を守って使用する

4.摂取方法

偏った脂肪酸の取り方をしない




次はこれを要チェック

植物油脂の種類一覧 脂肪酸




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