陰陽五行説と東洋医学

東洋医学の治療の原則と治療法

東洋医学の治療の原則と治療法

これまで東洋医学の基本的な概念の説明と、どのように不調を診断し、分析していくかを説明してきました。その後は治療法を決めていきます。その際に大切な治療の原則と、治療法の種類を説明していきます。これまでの詳しい説明は下記をご覧ください。

東洋医学の実践法

※図や表以外で、東洋医学の言葉は全て[ ]の中に表しています。例えば、[心]は東洋医学での[心](しん)を表し、普通に心と書いてある場合は、通常の「こころ」を表しているとお考え下さい。そして[ ]内の言葉はまとめて東洋医学の言葉一覧のページで意味を調べられます。

目次

  1. 治則:治療の原則
  2. 治法:治療法の種類



[治則]:治療の原則

東洋医学の治療の原則には何種類かあります。症状によって、その原則を適応するかを臨機応変に対処していきます。

[標本治則](ひょうほんちそく)

[標]は表面的な症状、[本]は根本的・本質的な病気の原因のことです。そのため、[本治]は根本的な不調の原因を治す方法で、[標治]は表面的な症状をまず治す治療になります。[標]の症状は、部位は外側、原因は邪気の侵入、[本]より後の病状です。[本]の症状は、部位は内側、原因は正気の不足、[標]より先に現れる病因です。例えば、鼻炎を考えたときに、鼻炎の症状は[標]です。でも根本の原因である[本]は、胃腸が弱いことになります。

治則①[治病求本]

病気を治す際に、表面的に表れている症状だけを見るのではなく、根本的な原因を明確にするのが[治病求本]の意味です。

治則②[急標緩本] / [緩則治本] /[ 急則治標]

比較的症状が穏やかな場合は、[本]である根本的な病因の改善を優先し、症状が辛い場合は、[標]である表面の症状をとりあえず緩和させることを優先するという意味です。例えば、花粉症の時期は、とりあえずくしゃみや鼻水を抑える[標治]を行いますが、時期が過ぎたら根本的なアレルギー改善の[本治]を行います。

治則③[標本同治]

[標]も[本]もどちらも重要性がある状態のときは、同時に治療します。例えば、[気虚]の場合にかぜをひいたとき、[標]である[解表]だけを行うと[正気]が弱まってしまい、[本]である[補気]を行ってしまうと、体ににバリアを張ることになるので病邪を体内にとどめてしまいます。そのような場合は、[解表]と[補気]の両方を同時に行います。

[虚証] or [実証]

治則④[扶正袪邪]

[扶正]とは、[正気]を強めて[病邪]を除去する力を強めることです。[袪邪]とは、[病邪]を取り除き症状を改善することです。そのため、[扶正]はもとから[正気]が少なくて病気になってしまう[虚証]の人に合う方法で、[袪邪]はもとから[正気]はあるものの、[病邪]が強すぎて病気になってしまった[実証]の人に合う方法です。

治則⑤[補虚瀉実](ほきょしゃじつ)

[正気]が不足した[虚]の場合は[正気]を補う[補法]をし、[邪気]が多い場合の[実]の場合は[瀉法]をするという原則です。瀉すとは、取り除くという意味です。

病気と治し方の原則

治則⑥[同病異治]

同じ病気でも、人が違ったり、時期や地域の違いで異なる治療法になることを[同病異治]と言います。

治則⑦[異病同治]

違う病気でも、証が同じであれば同じ処方を用いることを[異病同治]と言います。

[三因制宜]

自然の移り変わり、個人の年齢や体質などによって臨機応変な判断をしなければいけません。時・地・人の3つに応じて判断することを[三因制宜]と言います。

治則⑧[因時制宜](いんじせいぎ)

同じ病気でも季節を考慮して治療法を判断しなければいけないという治則です。特に日本は四季があるので、同じ症状でも季節によって治療法が変わります。

治則⑨[因地制宜](いんちせいぎ)

同じ病気でも、地域を考慮して治療法を判断しなければいけないという治則です。地域によって気候や風土が異なるので、食生活や生活習慣が違うからです。

治則➉[因人制宜](いんじんせいぎ)

同じ病気でも、個人差を考慮して治療法を判断しなければいけないという治則です。年齢、性別、体質など様々な個人差を考慮しなければいけません。



[治法]:治療法の種類

治療の基本的な方法には8種類あります。簡単に言うと、[汗・吐・下・和・温・清・消・補]の8つです。これを[治法八法](ちほうはっぽう)と言います。不調によって、これらの一つの治療をすればいい場合と、複数の治療を組み合わせる場合があります。

治法八法

1. 汗法(かんほう)・解表法(げひょうほう)・発汗法(はっかんほう)
2. 吐法(とほう)
3. 下法(げほう)・瀉下法(しゃげほう)
4. 和法(わほう)・和解法(わかいほう)
5. 温法(おんほう) 袪寒法(きょかんほう)・散寒法(さんかんほう)
温裏法(おんりほう)
温経散寒法(おんけいさんかんほう)
6. 清法(せいほう) 清熱法(せいねつほう)
瀉火法(しゃっかほう)
涼血法(りょうけつほう)
7. 消法(しょうほう) 理気法(りきほう)・行気法(こうきほう)
利水法(りすいほう)・化痰法(かたんほう)
理血法(りけつほう)
降逆法(こうぎゃくほう)
8. 補法(ほほう) 補気法(ほきほう)
補血法(ほけつほう)
補陰法(ほいんほう)
補陽法(ほようほう)
滋陰法(じいんほう)・生津法(せいしんほう)
昇堤法(しょうていほう)

[汗法](かんほう)

重に[表証]の症状に使います。発汗作用のある薬物を使って、汗を出すことによって病邪を排出する方法です。[解表法](げひょうほう)・[発汗法](はっかんほう)とも言います。

[吐法](とほう)

吐き気を促す薬物を使って、体内の毒を吐いて排除する方法です。一般的にはあまり使われません。

[下法](げほう)

排便促進作用のある薬物を使って、病邪や体内の停滞物を便で下す方法です。[瀉下法](しゃげほう)とも言います。

[和法](わほう)

和解調和することで症状を回復させる方法です。[半表半裏]や[肝脾不和]のときにこの[治法]を用います。[和解法](わかいほう)とも言います。

[温法](おんほう)

[温性]または[熱性]の薬物を用いて、[陽気]の活性化、もしくは[寒邪]の除去をする方法です。[袪寒法](きょかんほう)・[散寒法](さんかんほう)・[温裏法](おんりほう)・[温経散寒法](おんけいさんかんほう)などがあります。

[清法](せいほう)

[涼性]または[寒性]の薬物を用いて、[熱邪]を冷ます方法です。[清熱法](せいねつほう)・[瀉火法](しゃっかほう)・[涼血法](りょうけつほう)などがあります。

[消法](しょうほう)

[気血津液]の停滞により生じた[気滞][瘀血][水滞]などを排除する薬物を用いる方法です。[気滞]には[理気法](りきほう)・[行気法](こうきほう)、[水滞]には[利水法](りすいほう)・[化痰法](かたんほう)、[瘀血]には[理血法](りけつほう)、[気逆]には[降逆法](こうぎゃくほう)などを用います。

[補法](ほほう)

不足を補う薬物を用いて、滋養強壮する方法です。[気虚]には[補気法](ほきほう)、[血虚]には[補血法](ほけつほう)、[陰虚]には[補陰法](ほいんほう)、[陽虚]には[補陽法](ほようほう)、[津虚]には[滋陰法](じいんほう)・[生津法](せいしんほう)、[気陥]には[昇堤法](しょうていほう)などを用います。




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